プロペシア®で体臭がキツくなることってあるの?

薄毛

プロペシア®は、AGA(男性型脱毛症)を軽減する脱毛抑制剤で、男性の頭髪の悩みにとってとても頼もしい味方です。しかし、プロペシア®を服用すると体臭がキツくなる副作用があるのではないか?という噂があり、本当なら服用を躊躇してしまいますね。

本当にプロペシア®に体臭をキツくする副作用はあるのでしょうか?臨床試験結果や成分の作用機序などから、プロペシア®の副作用について検討してみました。

プロペシア®に体臭に関わる副作用はない

プロペシア®の副作用の項目には、以下のような副作用が書かれています。とはいえ、これらの副作用の発生頻度は非常に低いため、プロペシア®を服用している人が多く発症するというわけではありません。

  • 肝機能障害
  • 薬剤過敏症
  • 性機能障害
  • その他、めまいなど

このうち、重大な副作用として挙げられるのは「肝機能障害」です。肝臓は「沈黙の臓器」と言われるほど、不調になっても自覚症状に乏しい臓器であることから、プロペシア®を処方しているクリニックの中には、処方後に定期的な血液検査を行い、肝機能障害の有無を調べているところもあります。

なお、これはプロペシア®が肝臓に特別悪い影響を及ぼす作用を持っているということではありません。経口投与する薬剤である以上、その代謝は必ず肝臓で行われることから、プロペシア®に限らず薬剤を摂取するとその副作用に肝機能障害が入ってしまうのは仕方のないことなのです。

肝機能障害が起こると、血液検査でAST(GOT)値、ALT(GPT)値、γ-GTP値の上昇が認められますので、これらの数値に異常が見られたらプロペシア®の服用を医師と相談しましょう。

薬剤過敏症は、プロペシア®に対するアレルギー反応です。有効成分であるフィナステリドだけでなく、添加物として含まれるものに反応して起こることもありますから、プロペシア®を服用し始めてから「体がかゆくなる」「ぽつぽつと蕁麻疹が出る」などの症状が出た場合にはすぐに医師に相談しましょう

また、ごくわずかですが性機能障害についても、臨床試験における報告があります。しかし、プロペシア®の有効成分であるフィナステリドは男性の性機能を司る「テストステロン」というホルモンに作用することはありません。ですから、理論上は性機能障害が起こることは考えづらく、これらの副作用についてはプロペシア®自体の作用ではなく、その他の環境要因が作用しているのではないかと考えられています。

以上のことから、プロペシア®の副作用の項目に「体臭」がないことがわかります。つまり、臨床試験や使用成績調査などの検査・調査において、「体臭」の副作用は認められなかったのです。

プロペシア®の有効成分、フィナステリドってどんな成分?

フィナステリドは、AGA(男性型脱毛症)の原因である「DHT(ジヒドロテストステロン)」というホルモンの産生を抑える成分です。DHTは男性ホルモンである「テストステロン」が「5α-リダクターゼ」という酵素と結合することで作られるため、フィナステリドはその5α-リダクターゼの働きを阻害することでDHTの産生を抑えます。

テストステロンも、DHTも、体臭と直接関係のあるホルモンではありません。ですから、フィナステリドが直接体臭に何らかの作用を及ぼすことはないと考えられます。また、フィナステリドが効果を及ぼすのは男性ホルモンを変化させる酵素に関してですから、プロペシア®の効果があるのはあくまでもAGAのみで、女性の脱毛症についてはほとんど効果がないことがわかっています。

体臭がキツくなる原因として考えられることは?

プロペシア®そのものの作用として直接、体臭に関与することはありませんが、副作用の一部が間接的に体臭を引き起こしている可能性はあります。それは、プロペシア®の副作用として挙げられている「肝機能障害」です。

体臭は、臓器の機能低下によって強くなることがあります。これは、消化器官の機能低下や消化不良によって胃腸から悪臭が発生してしまうことで、摂取した食事や栄養素が充分に分解されないことから起こると考えられています。肝臓は多くの代謝機能を司っているため、肝機能の低下や何らかの障害によって、代謝・消化機能が低下することは充分に考えられることです。

体臭は、毎日の対策が重要!

体臭は、汗や消化器官から発生することが多いです。そこで、対策として取れるのは「汗を体臭にしない」ことと、「摂取する食材に気をつける」ことが挙げられます。

かいた汗を体臭にしないために気をつけることは?

汗で体臭が強くなる原因は、「皮脂腺から分泌される皮脂が空気に触れて酸化すること」「エクリン腺から分泌された汗に汚れがつき、雑菌が繁殖すること」です。そこで、これらのことを防ぐための対策が重要です。

  • 朝、出かける前に1分間シャワーを浴びる
  • 日中、汗をかいたら1時間以内に拭き取る
  • 夜、お風呂で汗をかいておく

朝の1分間シャワーは、皮脂線からの皮脂分泌を抑えることができます。朝、出かける前に1分間シャワーを浴びることで、皮脂量が約1/3まで減少するとも言われており、寝ている間にかいた寝汗も流すことができます。石鹸でゴシゴシ擦る必要はなく、むしろ皮脂を洗い流しすぎてしまうため、体温より少し熱めの40度くらいのお湯でシャワーを浴びましょう

朝シャワーの注意点としては、特に寒い冬に脱衣所で服を脱いだ後、熱いお湯をいきなり体に浴びると血圧の乱高下が起こり、心臓に大きな負担がかかる「ヒートショック」という現象が起こってしまうリスクがあることです。ヒートショックのリスクを減らすためには、心臓から離れた手や足先などの末端から始め、徐々に中心へと熱いお湯を浴びるようにしましょう。

また、出かける前の制汗剤は必ず汗をかく前に使いましょう。汗をかいてからでは、かいた汗を除去することはできないため、結局ニオイの原因になってしまいます。汗をかいた後に制汗剤を使いたい場合は、ボディシートなどで汗を拭き取ってから使いましょう。シートタイプの制汗剤を使うのもいいですね。

分泌されたばかりの汗は99%が水分であるため、ほぼ無臭です。しかし、汗をかいたままで放っておくと皮脂や汚れと混ざり、雑菌によって分解され、ニオイが発生します。汗をかいてからニオイが発生するまでにはおよそ1時間程度かかると言われているため、発汗からだいたい1時間以内に拭き取ればニオイが発生しにくくなります。

日中は、汗をかきやすい時間帯です。特に、朝にシャワーを浴びた後は血行が良くなっていて汗をかきやすくなっているため、気づかないうちに発汗していることも多いので、発汗したことを意識してからだけでなく、気づいたときにこまめに拭き取るようにしましょう

さらに、汗の成分が薄い、つまり水に近いほどニオイを発する可能性は低くなります。これは、日頃から汗をかいている人ほど定期的に汗に含まれる不要物を排出していることによります。日頃から汗をかかない人がたまに汗をかくと、ニオイの発生しやすい濃くねばねばした汗を分泌してしまうのです。

ですから、日頃から運動をしている人は問題ないのですが、運動をする習慣のない人はぜひ、夜に湯船につかりましょう。10分程度湯船につかると、適度に汗をかくことができます。血行をよくするためにも、ニオイの薄い汗を作るためにも、湯船につかることは大切です。

すぐにできるニオイ対策グッズとしては、「頭皮ケアスプレー」「マウスウォッシュ」「ピーリングパック」があります。頭皮の保湿と殺菌ができるスプレー、口の中の雑菌を減らすマウスウォッシュ、足裏の角質を除去してやはり雑菌を減らすことができるピーリングパックはそれぞれの部位のニオイが気になる人に有効です。汗や皮脂対策と併用して使うと良いでしょう。

食べ物からも体臭対策ができるの?

食べ物からも体臭対策をすることができます。具体的には、以下のような食材が体臭を抑えるのに役立ってくれます。

抗酸化食材
りんごやブルーベリー、キウイやナッツ類など
食物繊維
ゴボウなどの根菜類やきのこ類、海藻類
発酵食品
納豆や味噌、ヨーグルトなど
クエン酸
梅干し・レモンなどの酸っぱい食品

抗酸化食材とは、抗酸化作用のあるポリフェノールや、ビタミンC・Eを含む食材のことです。活性酸素が過剰に働くのを抑え、タンパク質や脂質の酸化を抑制してくれるため、体臭予防に役立ちます。食物繊維は老廃物を排出するのをサポートしてくれるだけでなく、腸内の善玉菌の餌となり、腸内環境を整えるのに役立ちます

腸内環境を整えるためには、発酵食品も大いに役立ちます。善玉菌を活性化して腸内での悪臭成分の産生を抑制するとともに、ニオイ物質を便とともに排出してくれます。また、クエン酸は疲労回復を促し、疲労からくる体臭のもとになるアンモニア臭を防ぐ効果があります。ぜひ、これらの物質を積極的に摂取するようにしましょう。

おわりに:プロペシア®そのものが体臭をキツくするわけではない

臨床試験や使用成績調査からも、プロペシア®の副作用に体臭はないことがわかっています。また、プロペシア®の有効成分であるフィナステリドも、体臭に関係する作用がないことがはっきりしています。そこで、理論上はプロペシア®が体臭をキツくすることはないと言えます。

しかし、肝機能の低下などから間接的に体臭を誘発する可能性はあります。普段から体臭が気になっている人は、制汗対策や食生活の見直しをしてみましょう!

監修 : ソラリアクリニックグループ特別顧問、泌尿器科専門医、指導医、医学博士 古賀 祥嗣

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