ビタミン不足が原因でEDになってしまうことがある?

ED

男性機能に関する障害で代表的なものと言えば、EDが挙げられます。EDは精神的・身体的な原因のどちらからも起こりうる症状ですが、身体的な原因の一つにビタミン不足があると言われています。

ビタミン不足は、EDの原因になりうるのでしょうか?EDの起こる原因や、ビタミンを始めとした栄養素と男性機能の関係について解説します。

ビタミンが足りないとEDになるの?

そもそもEDとはなぜ起こるのでしょうか。それは、何らかの原因で血行が悪くなってしまい、陰茎の海綿体に十分な血液が行き渡らず、勃起が妨げられることによります。血行不良にはさまざまな原因があり、栄養バランスの乱れから血中の脂肪分が増えて流れにくくなること、運動不足で筋力が衰えて血液の流れが阻害されてしまうことなどが挙げられます。

そこで、EDを改善または予防するためには、生活習慣の改善が必要不可欠です。特に、脂質を控え血中に流れ込む脂肪分を少なくすることで、血液をサラサラに保つことは動脈硬化からの心筋梗塞や狭心症などの重大な疾患につながるリスクを下げる意味でも大切なことです。また、血管が活性酸素による酸化ストレスを受けると傷つき硬くなるため、やはり弾力性が失われて動脈硬化の原因となります。

これらのリスクを防ぐためには、抗酸化ビタミンと呼ばれる「ビタミンA」「ビタミンC」「ビタミンE」が大切です。抗酸化ビタミンは活性酸素による酸化ストレスから血管を始めとして体を守ってくれるだけでなく、ビタミンEは血液の巡りをよくしてくれる血行促進作用も持っています。さらに、ビタミンEはホルモン分泌を司る視床下部の働きを活性化したり、性機能に関わる男性ホルモンであるテストステロンの生成を助けたりする働きもあります。

これらのビタミンは、人参・ほうれん草などの緑黄色野菜(ビタミンA)や、レモン・キウイなどの果物(ビタミンC)、アーモンド・ピーナッツなどのナッツ類(ビタミンE)に多く含まれています。日頃からこれらの野菜や果物を意識して摂るようにしましょう。逆に言えば、これらのビタミンが慢性的に不足していると、EDになりやすくなると言うこともできます。

さらに、スムーズな勃起・射精のためには、精液を十分に作っておく必要があります。男性の精液を作るためには、タンパク質・ビタミン・ミネラルが必要不可欠です。ビタミン以外にもタンパク質の多く含まれる大豆などの食品や、男性の性機能に欠かせないミネラルである亜鉛を含む牡蠣や豚レバーなどの食品を適宜食事の中に取り入れるようにしましょう。

ビタミン以外に必要な栄養はある?

前述の亜鉛やタンパク質など、ビタミン以外にも男性機能に欠かせない栄養素はたくさんあります。ここでは、大きく分けて5つの栄養素について解説します。

男性の生殖機能に欠かせない「亜鉛」

亜鉛は、男性の生殖機能に大きく関係している「前立腺」や「睾丸」などの臓器に多く分布しているミネラルです。このミネラルが不足すると、性欲や男性らしさを司る男性ホルモンであるテストステロンの分泌量が低下することが知られており、亜鉛不足は器質的な男性機能の低下だけでなく、精神面からも性欲減退や抑うつ状態といった男性機能の低下を招いてしまいます。

亜鉛が多く含まれる食べ物は、牡蠣や豚レバー、うなぎなどがあります。しかし、これらの食材を日常的に摂取することは難しいため、日常的に摂取できる食材で亜鉛が多いものでは「しじみ」がおすすめです。特に、お酒を飲んだ翌朝には味噌汁を摂ると良いとされていますが、その際にしじみの味噌汁にするとさらに良いと言えそうです。

男性機能に欠かせないもう1つの栄養素「アミノ酸」

アミノ酸は、性欲や男性機能を高めるのに欠かせない栄養素です。特に、必須アミノ酸と呼ばれる体内で生成することができない9種類のアミノ酸(イソロイシン・ロイシン・バリン・ヒスチジン・リシン・メチオニン・トリプトファン・フェニルアラニン・スレオニン)は食物から摂取しなくてはならないのです。

これらはエネルギー代謝や脂肪の分解に関与しており、体の細胞の成長促進や修復、血圧を安定させるなどの効果が期待できます。つまり、EDの原因である血中の脂質を分解してエネルギーに変えたり、血行の流れを良くしたりして十分な血流を維持できるようにしてくれる働きがあると言えるのです。また、トリプトファンはセロトニンの原料となり、抑うつ状態を改善してくれます。

アミノ酸は肉や魚、納豆や豆腐など、動物性・植物性のタンパク質に含まれています。魚や大豆食品などであれば脂質にはそれほど気を使わなくても大丈夫ですが、牛や豚などの肉を食べてタンパク質を補う場合には、脂質の摂りすぎにならないよう気をつけましょう。鶏肉のささみやむね肉、牛や豚のヒレ肉は比較的脂質が少なくおすすめです。

逆に、牛や豚のバラ肉は非常に脂質が多く、ヒレ肉と比べると100gあたり300〜400kcalもカロリーが多くなっていますので、くれぐれも食べすぎないように注意しましょう。また、調理する際に余分な油は吸い取る、蒸して減らす、茹でたり煮込んだりして表面の油を捨てる、など、ひと手間工夫して余分な脂質を落とすことも効果的です。

体に良い脂質「DHA」「EPA」

「DHA(ドコサヘキサエン酸)」「EPA(エイコサペンタエン酸)」は、どちらも血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、血液をサラサラにしてくれる働きを持っています。特に、DHAは脳や網膜などの神経系に豊富に含まれている栄養素であることから「青魚を食べると頭が良くなる!」といったフレーズで馴染み深い人も多いのではないでしょうか。

頭が良くなるかどうかはさておき、これらの脂肪酸は脂肪と名前はついていても体に悪影響を及ぼす悪玉コレステロールとは別物で、むしろ悪玉コレステロールを減らし、高脂血症や動脈硬化を防いでくれる働きがあることがはっきりしています。そこで、EDを改善する上で効果的な「血流を良くする」という作用があると言えるのです。

DHAやEPAは、フレーズの中にもあるように青魚に多く含まれています。馴染み深い魚では、ニシン・サバ・イワシ・マグロ・カツオ・サンマ・ブリなどが青魚に当たります。また、これらの魚からは良質なタンパク質も摂取できるため、肉よりもこうした青魚を積極的に食べるようにすると、ED改善に効果的な栄養素を効率的に摂取することができます

生活習慣病のリスクを減らす「アリシン」

アリシンには、生活習慣病の主な原因とも言える「コレステロール値の上昇」「活性酸素による血管の老化」「悪玉コレステロールの増加」の全てを防ぐ効果があります。ですから、アリシンは加齢や生活習慣病に伴って引き起こされるEDを改善するのに効果的と言い換えることもできます。

アリシンはタマネギ・ニンニク・ニラ・ラッキョウなどのネギ類に多く含まれています。特にタマネギはサラダにもスープ・カレーなどにも、煮物・焼き物にも、さまざまな料理に合わせることができる万能食材です。いろいろな調理法で、積極的にタマネギを摂取していきましょう。

腸内環境と精神を整える「乳酸菌」と「食物繊維」

乳酸菌は、腸内の善玉菌と同じ種類の菌であり、食物繊維はその善玉菌類の餌となる食物です。そこで、この両者を充分に摂取すると腸内環境を整えてくれます。実は、腸内環境が整うと精神的に安定しリラックスしやすくなるのです。これは、腸内環境が良い状態だと、気持ちを落ち着かせ、心身をリラックスさせてくれるホルモンである「セロトニン」の分泌がさかんになることによります。

EDは、大きなストレスを抱えていたり心が不安定な状態になっていたりしても起こりやすくなります。ですから、仕事や家庭でストレスが多い、またはストレスを感じやすい男性は特に腸内環境をしっかりケアし、セロトニンの分泌量を増やすこともED改善につながるのです。

その他、食事で注意することとは?

ビタミンなどの栄養素以外に、食事で気をつける必要があるのは以下のような点です。

  • 腹八分目
  • 塩分控えめ
  • ファストフード・コンビニ弁当控えめ
  • アルコール控えめ

どんなに栄養バランスを考えた食事でも、食べ過ぎ・摂りすぎはもちろん良くありません。特に、体を動かすような仕事をしている人はまだ良いのですが、オフィスワークなど体を動かさない仕事をしている人はエネルギーを消費しにくく、炭水化物や脂質を摂りすぎると血液がドロドロになってしまい、生活習慣病を引き起こすリスクが高くなります

また、塩分控えめを意識することも重要です。マウスを用いた研究によると、高濃度の塩分を含んだ食事を摂取させたマウスでは正常なマウスと比較して陰茎の海綿体内圧が低下し、EDを発症することがわかっています。日本人は干物や漬物、味噌汁、塩辛など、塩分の多いおかずや汁物を好んで食べる傾向がありますから、普段から少し意識して塩分少なめを心がけましょう

ファストフードやコンビニ弁当は、炭水化物や動物性タンパク質が多く、栄養バランスが偏りやすくなってしまいます。忙しくてどうしても外食が多くなってしまう場合は、野菜の多いメニューを選んだり、少なめのお弁当にサラダなどの野菜をプラスしたりしてメニューを選ぶと良いでしょう。可能であればED改善に効果的な食材を使って自炊するのもおすすめです。

アルコールは、適量であれば血流を促進し、血行を良くする効果があります。しかし、血管を拡張させて血圧を下げる作用もあるため、大量の飲酒は一時的に勃起を阻害するおそれがあります。限度を超えた飲酒は精力維持の妨げになるだけでなく、肝機能を始めとした健康な身体機能を害するリスクが高くなります。厚生労働省の発表なども参考にしながら、適度な飲酒を心がけましょう。

おわりに:慢性的なビタミン不足はEDの原因になる

ビタミン不足は、一時的なものであればそれほど心配はいりません。しかし、慢性的にビタミンA・C・Eなどの抗酸化ビタミンが不足すると、体は活性酸素によってどんどん酸化し、錆びついていきます。

活性酸素は細胞を障害する性質があり、この性質によって陰茎の血管も傷つけてしまうため充分に勃起障害の原因になりうるのです。日頃から野菜や果物を積極的に摂取し、栄養バランスの良い食生活を心がけましょう!

監修 : ソラリアクリニックグループ特別顧問、泌尿器科専門医、指導医、医学博士 古賀 祥嗣

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