EDは修復医療で治せるって本当?そもそも修復医療ってどんな治療?
EDは男性にとって非常に辛い悩みの一つです。しかし、これまでは精神的なものや加齢による影響が大きいと考えられており、根本的な治療法は見つかっていませんでした。
ところが、近年、バイオ技術の発展などにより、傷を治すのと同じ物質でEDの根本的な治療も行えることがわかってきました。この記事では、EDの根治を目指す修復医療について解説します。
修復医療でEDが治るのはなぜ?
EDとは、Erectile Dysfunctionの頭文字を取った略語で、日本語では「勃起障害」「勃起不全」などと訳されます。勃起が不十分であるために性行為に支障がある状態のことで、日本では40歳以上の男性の3人に1人が該当するといわれています。
年齢を重ねるとEDになる人の割合が増えることから、EDは加齢による変化であり、根治は難しいとされてきました。2000年ごろから一時的に勃起を維持する飲み薬が登場しましたが、あくまでも対症療法であり、薬剤の効果で強制的に血管を拡張させて血流を良くすることでの副作用も懸念されていました。そこで、副作用の懸念のない新たな治療法として、修復医療が注目されています。
乳歯歯髄幹細胞培養上清液(SGF)って?
ED治療としての再生医療に使われるのは、乳歯歯髄幹細胞培養上清液(SGF)と呼ばれる培養液です。培養上清液の中にはたくさんのサイトカイン※1や成長因子※2と呼ばれる生理活性物質が含まれていて、細胞の機能を活性化したり、損傷した組織を修復したりする働きをします。
数ある幹細胞培養液の中でも、乳歯の歯髄幹細胞培養上清液には非常に多くのサイトカインや成長因子などのタンパク質成分を含んでいて、その数は500種類以上と言われています。これらの成分の働きにより、細胞の機能を活性化したり損傷した組織を修復するほか、血管を再生し「若返り」を促したり、自己の幹細胞とともに臓器を再生に導いたりすることができます。
SGFの一番のメリットは、幹細胞そのものを移植するわけではないため、拒絶反応などのリスクが非常に少なく、安全性が高い点です。さらに、移植するよりもコストが抑えられ、より安価に治療を行うことができます。
SGF療法の仕組みって?これまでと何が違うの?
SGF療法では、局部に直接注射を行い、培養上清液を投与します。注射された培養上清液に含まれるサイトカインや成長因子が血管の内皮細胞に働きかけ、損傷して拡張しづらくなった血管の分泌機能や組織そのものを修復・再生します。
陰茎の海綿体組織や血管の内皮細胞そのものを再生するため、勃起能の回復が一時的なものに留まらず、持続します。また、投与された培養上清液に含まれるサイトカインや成長因子が血液に乗って体内を移動することで、他の組織で損傷している細胞の修復や再生を促し、生活習慣病の予防になることも期待されます。
これまでのED治療は、バイアグラ・レビトラ・シアリスなどの薬剤による治療が一般的でした。これらの薬剤は血管の内皮細胞から分泌される、eNOSと呼ばれる物質の分泌を促すことで、一時的に勃起を起こしていたのです。しかし、血管の内皮細胞そのものが損傷している場合、eNOSの分泌がほとんど起こらないため、ED薬が効きにくい場合も多くありました。
SGF療法では、血管の内皮細胞そのものや、機能自体を改善させます。そもそもの細胞自体を再生することにより、eNOSの分泌も正常化するため、一時的な勃起の維持ではなく、勃起能そのものの回復と持続ができるのです。
修復医療で使われる培養上清液には何が含まれている?
SGFには、「上皮細胞成長因子(EGF)」「トランスフォーミング成長因子」「血小板由来成長因子」「血管内皮細胞増殖因子」「インスリン様成長因子」を始め、数百種類のサイトカインやエクソソームが含まれます。
- 血小板由来成長因子(PDGF)
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- EGF・IGFとともに傷ついた皮膚細胞の再生を促す
- 血管を新しく作る
- 育毛を促進する
- 血管内皮細胞増殖因子(VEGF)
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- 毛根へ栄養を運び、発毛を促す
- 細胞の産生・増殖に関与し、肌つやを良くする
- 血管の新生・修復を促進する
- 上皮細胞成長因子(EGF)
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- DNAを合成し、新しい細胞を増殖させる
- 傷口の修復・再生を早める
- 肌の色や肌質を改善し、滑らかにする
- インスリン様成長因子(IGF)
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- 新しい肌細胞を産生し、シワの予防・改善をする
- コラーゲンやエラスチン・ヒアルロン酸などの産生を促す
- 全身の無駄な脂肪を燃焼させる
- 毛根を刺激し、髪の毛を強くする
- トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)
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- 肌細胞の成長を促進し、創傷の自然治癒を促進する
- 肌細胞の産生・増殖によってシワを予防・改善する
- コラーゲンやエラスチンなどの構造を強化し、肌の弾力性を増す
- トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)
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- 細胞の老化を防ぐ
- 傷跡を残さず修復する
- 上皮細胞が増殖しすぎるのを抑制する
このうち、ED治療に深く関与しているのは主に「血小板由来成長因子(PDGF)」「血管内皮細胞増殖因子(VEGF)」です。
血小板由来成長因子(PDGF)は、名前のとおり血小板が血液を凝固させるときに放出される成長因子です。PDGFは単独では細胞の産生・増殖に関われず、上皮細胞成長因子(EGF)やインスリン様成長因子(IGF)とともに働きます。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、繊維芽細胞というコラーゲンやエラスチンを産生する細胞から分泌される成長因子で、血管内皮細胞だけでなく血管の新生すべてを促進する働きがあります。
また、トランスフォーミング成長因子(TGF)は、αとβ、さらにそのスーパーファミリーなどと呼ばれるグループが存在するほど種類が多い成長因子です。TGF-αはマクロファージや脳細胞などで産生され、上皮細胞の発生・増殖を促す因子で、TGF-βは腎臓・骨髄・血小板などほぼ全ての細胞で産生され、骨芽細胞やコラーゲンなど、結合組織の合成・増殖を促す因子です。
修復医療は、どんな人におすすめなの?
修復医療によるED治療は、一般的に普及しているED治療薬が効きにくい、あるいは副作用が心配な人や、根本的なED治療を行いたい人におすすめの治療法です。ED治療薬と比較すると料金は少し高めですが、移植や薬剤と比較して副作用のリスクが非常に低く安全で、かつ効果の持続性もあります。
ED治療薬を試したけれど副作用が出てしまった人、あるいは血管障害性のEDで治療薬が効きにくい人、病院に頻繁に通いたくない人、EDの根治を目指したい人は、一度医師に相談してみると良いでしょう。
おわりに:EDは修復医療で根本的に治せる
EDは、これまで加齢や精神的な要素が大きいと考えられており、薬剤による一時的な対症療法のみが行われてきました。しかし、SGF療法が開発されたことにより、血管や組織そのものの修復を行うことで細胞から治療を行い、機能を回復させることができることがわかってきています。
ED治療薬の副作用に不安のある人や、根治を目指したい人は、修復医療による治療を検討してみてはいかがでしょうか。