甘いものの食べ過ぎはEDを招くって本当?

ED

甘いものを食べ過ぎると、EDになりやすいと言われています。では、なぜ甘いものを食べることがEDにつながるのでしょうか?

この記事では、甘いものの食べ過ぎがEDを引き起こす仕組みや、その他にED対策として必要なことについて解説します。

甘いものの食べ過ぎがEDを引き起こすのはなぜ?

甘いものを食べ過ぎると、血液中の糖分が増えて血糖値が上がり、血液がドロドロになってしまいます。ドロドロになった血液によって血管が過剰に傷ついたり、動脈硬化によって血流が流れにくくなると、EDにつながることがあります。実際に、アメリカの研究グループによると、糖尿病の男性がEDを発症する確率は糖尿病でない男性の2〜3倍になるという調査結果もあります。

EDとは、性交時に挿入できる硬さに勃起できない、または挿入できても勃起を維持できない状態のことを指します。EDの原因には精神的なものと肉体的なものの両方がありますが、肉体的な原因の一つに、何らかの原因によって陰茎海綿体の血管にうまく血液が流れ込まず、海綿体の硬さを保つための圧力が足りなくなるというものがあります。

陰茎海綿体には、無数に血管が張り巡らされています。その代わり、一本一本の太さは非常に細く、少しの血流の減少や血管の障害の影響を受けやすくなっています。ですから、甘いものを食べすぎて血管が傷ついたり動脈硬化によって血流が流れにくくなったりすると、陰茎の血管に真っ先に症状が現れ、勃起を保つための圧力が足りなくなってしまうのです。

また、陰茎海綿体の血管に血液が流れ込みにくくなると、当然周囲の組織にも酸素や栄養分が行き渡りにくくなります。するとやがて、陰茎や会陰に存在する神経繊維に障害が起こることがあります。神経線維が障害され、脳との間の伝達が悪くなると、性的な刺激を受けてもそれが脳と性器の間で伝わりにくくなり、性的な反応が起こりにくくなります。こうしてますますEDが進行してしまうのです。

性的な反応や勃起に関わる神経に障害が起こってしまうと、EDを改善するのが難しくなります。これは、性的な欲求があるかどうかやテストステロンの分泌量とは全く別の問題です。ですから、甘いものが好きで心因性の原因の心当たりがないのにEDが疑われる人は、神経の障害にまで症状が進行してしまう前に医師の診察と血糖コントロールの指導を受けるのが良いでしょう。

EDの治療は進歩しており、精神的な原因でなく糖尿病のように解剖学的な理由が原因の場合は、食事療法や運動療法、場合によっては薬物療法も併用しながら治療していきます。既に糖尿病を発症している場合は、糖尿病の治療によって陰茎だけでなく全身の血流を改善することができ、神経障害のリスクも下げることができます。これはもちろんEDだけでなく、その他の様々な合併症を予防するのにも大切なことです。

甘いものの食べ過ぎによる「糖化」に注意

甘いものを食べ過ぎると、血管以外にも体のさまざまな部位に害が起こります。これは「糖化」と呼ばれ、細胞を老化させる原因の一つとされています。「糖化」は肥満や内臓脂肪の蓄積とは違い、痩せているか太っているかに関わらず起こる現象です。筋肉などの組織を構成している主成分はタンパク質ですが、このタンパク質が過剰に摂取された糖質と結びつくと「糖化」が起こるのです。

細胞中のタンパク質が「糖化」されると、肌がくすんだりたるんだりします。これは、例えばパンケーキを作るとこんがりと焼き色がつくのと同じ現象で、「メイラード反応」と呼ばれます。パンケーキの主成分もタンパク質と砂糖ですが、たねを常温で混ぜている状態では焼き色はつきません。フライパンの上で加熱することで、初めて焼き色がつくのです。

体内で起こる「糖化」も同様の原理で起こります。つまり、糖と結びついたタンパク質が、35〜37℃の人肌によって温められ続け、褐色の老化物質に変性するのです。この変性してできた老化物質はAGEs(終末糖化産物)と呼ばれています。糖質を過剰に摂取し続けると、消費しきれなかった糖が血中に流出します。そのため、初めに「糖化」が起こりAGEsに変性するのは赤血球内のタンパク質やヘモグロビンです。

ヘモグロビンが糖化すると、ヘモグロビンと酸素の結びつきが強くなり、赤血球が全身の組織に辿り着いても酸素を離しづらくなります。すると、体中の組織に酸素が十分に行き渡らなくなり、新陳代謝も低下します。糖化したヘモグロビンはやがてAGEsに変化します。AGEsが大量に発生すると、以下のような症状・リスクを引き起こします。

  • 肌のくすみ・たるみ
  • 血管の傷み・動脈硬化
  • 太りやすくなる
  • 認知症・がんのリスクが高まる

肌のくすみやたるみ、シワなどは肌の表皮の下に溜まったAGEsが引き起こしているとわかっています。例えば、肌の色が茶色っぽくくすむのは、メイラード反応で褐色になったAGEsが大量に発生したせいだと考えられるのです。急に肌がくすんできたなどの症状がある人は、体内も同様に「糖化」が起こっていると考えて良いでしょう。

痩せていて健康な人でも、食後は血糖値が上がるため血中に糖が流出します。しかし、通常はAGEsは代謝され、大量に蓄積されることはありません。AGEsの代謝は年齡とともに低下していくため、年齡を重ねていくとAGEsが蓄積されやすくなります。そのため、普段からAGEsが蓄積されにくい、糖化が起こりにくい生活をすることが若々しさや健康を保つ秘訣です。

また、糖化を防ぐためには、食事の順番を変えて食後に血糖値が急上昇しないようにすることも大切です。血糖値を上げる糖質は主食に多く含まれるため、野菜、タンパク質、主食の順で食べる「ベジファースト」などを実践すると良いでしょう。また、モロヘイヤ・フキノトウ・新ショウガ・ブロッコリースプラウト、ハッサク・マンゴスチンなどの食材は糖化を抑制する働きがあるので、積極的に摂取するのがおすすめです。

糖化ストレスを抑える作用のあるお茶もあります。

  • 柿の葉茶
  • カモミールティー
  • ドクダミ茶
  • ブドウ葉茶
  • ゴボウ茶
  • セイヨウサンザシ茶
  • 甜茶
  • ハマ茶
  • グァバ茶

これらのお茶は、糖化作用だけでなく抗酸化作用を持つものも多く、細胞の老化を防ぐために非常に有効です。好みのお茶があれば、定期的に摂取していきましょう。

甘いものを控える以外に気をつけること

糖化を防ぐために、糖質を控える、つまり甘いものを食べすぎないことはもちろん大切です。しかし、糖分が含まれるものは甘いものだけではありません。また、糖化とは直接関係がなくとも、ED改善に効果的な食品も積極的に摂取すると良いでしょう。そこで、甘い物以外にも控えるべき食べ物や、摂取すると良い食べ物をご紹介します。

糖質が多い食品を控える
甘くなくとも、炭水化物には糖質が多く含まれます。
パン・米・うどん・ピザなども食べすぎないことが大切です。
動脈硬化を防ぐビタミンEを摂取する
いわし・たらこ・モロヘイヤ・うなぎ・かぼちゃなど
ナッツ類にも多く含まれますが、ナッツ類は脂質も多いため摂りすぎないように注意しましょう。
トランス脂肪酸に気をつける
トランス脂肪酸は天然ではほとんど存在せず、工業的に油脂を加工すると生じます。
がん・不妊・血管系などの疾患の原因となることもあります。
マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、食用植物油、加工油脂などと表示されているものが該当するため、菓子パンやスナック菓子、クッキーなどをできるだけ避けるのが良いでしょう。
生きた酵素を食べる
消化・吸収を助ける酵素はタンパク質ですから、熱を加えると死んでしまいます。
すりおろし大根などのように、加熱しない調理法で食べると良いでしょう。
血栓を予防・溶かす成分を摂取する
ネギ類や納豆に含まれるナットウキナーゼには、血栓を予防したり溶かしたりする作用があります。
タマネギ・ニラなどのネギ類、納豆を積極的に摂取しましょう。
男性機能を増加させる食品を摂取する
亜鉛・アルギニンなどは、男性ホルモンを生成したり男性機能を強くしたりする働きがあります。
シジミや牡蠣、黒酢などを摂取するのがおすすめです。

これらの食品を意識的に摂取し、EDを改善していきましょう!

おわりに:甘いものの食べ過ぎで起こる「糖化」にご用心

甘いものの食べ過ぎは、全身の細胞に「糖化」というストレスを引き起こします。ですから、「自分は糖尿病を発症していないし、痩せているから大丈夫」と思うことは大きな間違いです。糖尿病を発症するよりもずっと前から、体には糖化ストレスがかかっているのです。

糖化ストレスを減らすためには、甘い物だけでなく糖質を多く含むものを控えましょう。また、抗糖化作用のあるお茶などを摂取することもおすすめです。

監修 : ソラリアクリニックグループ特別顧問、泌尿器科専門医、指導医、医学博士 古賀 祥嗣

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