薬剤性ED ― 薬の影響で勃起できなくなるって本当!?
ある薬を服用し始めてから、十分に勃起状態を得られなかったり、維持できなかったりしたら、「薬剤性ED」という病気が疑われます。今回は薬剤性EDの基本、原因となる薬、病気が疑われる際の対処法について説明します。
薬剤性EDってどんなED?
ED(勃起不全・勃起障害)は、その原因に応じて「器質性ED」、「心因性ED」、「薬剤性ED」などの種類に分けることができます。このうち薬剤性EDとは、ある薬の副作用によって起こるEDのことです。このEDは薬の副作用が原因なので、年齢に関係なく発症する可能性があるので注意が必要です。心当たりがある方は、一度、医師に相談するといいでしょう。
EDを引き起こす可能性がある薬とは!?
薬剤性EDを引き起こす薬は多く、たとえば、以下のようなものが挙げられます。なお、以下の薬を服用したからといって、必ずしも全員が薬剤性EDを発症するわけではありません。
- 中枢神経に作用する薬
- 抗うつ薬、抗けいれん薬、向精神薬、抗精神病薬など
- 末梢神経に作用する薬
- 筋弛緩薬、麻酔薬、抗コリン薬、鎮けい薬など
- 循環器系に作用する薬
- 降圧剤、利尿剤、血管拡張剤、不整脈治療薬など
- 消化器系に作用する薬
- 抗コリン薬、鎮けい薬、消化性潰瘍治療薬など
この中でも「ED診療ガイドライン」では、降圧剤、抗うつ薬、前立腺肥大症治療薬などが薬剤性EDを引き起こす可能性があることを説明しています。そこでこれらの薬とEDの関係性について、以下で詳しく確認してみましょう。
降圧剤
降圧剤は主に高血圧症の治療に使われる薬であり、これがEDの原因になっている可能性があります。詳しい発症メカニズムは分かっていませんが、「降圧剤を服用したことで性器に十分な血液が流れ込まなくなったから」と考えられています。ただし、高血圧自体もEDの原因となるので、本当に「降圧剤による薬剤性EDなのか」を見極める必要があります。
抗うつ薬
抗うつ薬はうつ病などの治療に使用される薬で、これには三環系抗うつ薬、SSRI、SNRIなどがあります。抗うつ薬の主な作用は「セロトニンを増加させること」です。ただ、セロトニンにはノルアドレナリンやドーパミンを抑制する働きがあり、それによって性機能なども抑制させます。そのため、抗うつ薬によってEDを起こしている可能性があります。
前立腺肥大症治療薬
前立腺肥大症治療薬のうち「5α還元酵素阻害薬」には勃起障害を誘発する副作用があることが分かっています。ただし、この薬自体はジヒドロテストステロンを減少させる薬であり、男性ホルモンの1つである「テストステロン」を減少させるものではありません。そのため、基本的には勃起障害や性欲減退などの副作用は少ないといわれています。
勝手に薬を中止しないことが大切!
もしEDの種類が「薬剤性ED」であれば、その原因となる薬を中止することで改善が期待できます。ただし、自己判断で薬を中止しないようにしてください。自己判断で勝手に薬を中止・調整すると、思わぬ健康被害を受ける可能性があるので注意しましょう。
たとえば、現在服用している薬が「降圧剤」だとします。その薬を勝手に止めてしまうと、血圧が高い状態が続き、血管壁を傷つけ、次第に動脈硬化を進行させます。その結果、さらにEDの症状を重くしたり、重篤な病気の原因になったりする可能性があります。このようなリスクがあるため、自己判断で薬を中止しないことが大切になります。
ED治療薬を併用できる場合もある
もし現在服用中の薬があって、さらにEDで悩まされていたら一度主治医に相談するといいでしょう。EDの原因が薬によるものであればED治療薬で改善が期待しやすく、その上現在服用している薬とも併用できる場合が多いです。また、自分では「薬剤性ED」と考えていても、別の種類かもしれないので、医師による正確な診断も受けることができます。
おわりに:薬の副作用でEDを起こすことはあります
普段服用している薬によって「薬剤性ED」を発症する可能性は十分に考えられます。もし何かの治療を始めてから勃起の異常を感じたら、一度主治医に相談すると良いでしょう。なお、自己判断で薬の中止をすると危険なので、医師の指示に従うことが大切です。