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EDを治すことが「若返り」につながる可能性があるのはなぜ?

ED

EDとは、性行為の際に十分な勃起状態が保てない状態のことを指します。EDは年齢の低い人よりも年齢を重ねた人で起こりやすい傾向があり、加齢との関係は自然に知られていました。
そこで、EDを治療することは、若返りにもつながる可能性が示唆されています。では、EDを治療することで若返りにつながるのは、どのような場合なのでしょうか?

EDは生活習慣病が原因の場合がある

EDのうち、体の機能に何らかの原因があって、物理的に勃起が阻害されて起こるEDのことを、器質性EDと言います。基質性EDは大きく3つに分けられます。

  • 血管障害性
  • 神経障害性
  • 内部分泌機能低下

血管障害性のEDは、加齢や糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病に起因する動脈硬化が原因のものと、前立腺がんや前立腺肥大などの外科的手術によって陰茎付近の神経や血管を損傷したことによるものがあります。神経障害性のEDは、不慮の事故などによる脳から陰茎までの神経のどこかを損傷することで伝達が上手く行かなくなることによるものです。内部分泌機能低下は加齢やストレス・喫煙や飲酒などによるテストステロンという男性ホルモンの低下などが原因です。

このうち、生活習慣病によるEDは血管障害性のもので、動脈硬化が直接の原因です。動脈硬化という症状は加齢によって誰にでも起こりうるもので、年齢を重ねるごとに血管の弾力性が失われていく状態です。弾力性が失われた血管は十分に拡張することができず、勃起に必要な十分な血液を海綿体に送り込むことができなくなってしまうという状態です。

ところが、動脈硬化の原因は加齢だけではありません。特に動脈硬化を起こしやすいのは糖尿病や高血圧・高脂血症などの生活習慣病です。これらの生活習慣病に合併した形でEDを発症する患者さんは多く、特に糖尿病の患者さんにおいては半数以上がEDの症状にも悩んでいると言われています。

糖尿病では、常に高血糖状態の血液が血管内を流れることで、血管の壁や血中のタンパク質が糖化され、血管の弾力性が失われたり糖化されたタンパク質が血管の壁に付着して動脈硬化が起こります。糖尿病の患者さんは、糖尿病でない人と比べてEDの発症リスクが約2倍になっているという報告もあります。

高血圧も糖尿病と同様、血管の壁に高い圧力がかかり続けることで血管の弾力性を弱めてしまいます。高血圧の人がEDを発症する確立は約70%と非常に高く、また重症化しやすいことで知られています。また、服用している薬剤がEDの状態に影響を与えていることもあるため、高血圧でEDの症状を発症した場合は一度医師に相談が必要です。

高脂血症の場合、血中に多量に含まれるコレステロールや中性脂肪が血管の壁に付着し、動脈硬化を引き起こします。これらは運動不足や肥満との関係も示唆されています。BMI値が30以上の人では、23未満の人と比較してEDのリスクが約1.7倍になるとも考えられています。

生活習慣病が「老い」の原因になる可能性が!?

生活習慣病は、老化の原因となっている可能性があります。体の機能が徐々に衰えていく老化そのものを避けることはできませんが、そのスピードには個人差があります。カレンダー上での年齢よりも、生物学的な年齢ははるかに高齢化しているということも考えられるのです。

米国のデューク大学加齢研究センターが、暦年齢が38歳の男女1,000人を対象として「腎・肝機能、肺機能、代謝及び免疫系の機能」「HDLコレステロール」「心肺機能」「染色体末端を保護するテロメアの測定」「歯の健康」「眼底の細小血管の状態」などの検査を行い、これらのバイオマーカーを基準として生物学的な年齢を測定したという研究があります。

この研究によれば、全員の暦年齢は38歳であったにも関わらず、生物学的な年齢は30歳から60歳までの幅広い差がありました。大部分の人では暦年齢の前後2〜3歳程度でしたが、年齢よりも若さを維持している人もいれば、生物学的には老化が進んでいる人もいたのです。

このことは、老化を意識し始める40歳代よりもずっと前から老化のプロセスは進行していることを示唆しています。逆に、若い頃から老化を防ぐような生活習慣を意識することで、暦年齢よりも老化を防ぎ、若さを保つことも可能であることもわかります。

老化に関する遺伝的な要因は約20%で、残りの80%は環境的な要因であるとも言われています。若い頃から生活習慣を意識し環境的な要因を変えていくことで、加齢を抑えることも可能であり、自分の生物学的な年齢を知ることはそのための格好の動機づけになるのではないかと考えられているのです。

若返るためには、生活習慣病の予防が大切

EDや老化を防ぐためには、生活習慣病の予防が大切であることがわかりました。生活習慣病は、その後重大な健康障害となる疾患に結びつく可能性が非常に高い状態でもあります。生活習慣病を防ぐためには、栄養や運動、喫煙、飲酒、そして適切な休養についての正しい知識を身につけ、習慣づけていくことが大切です。

タバコの害を排する「一無」とは?

タバコの三悪と呼ばれているものに、ニコチン・タール・一酸化炭素があります。これらはいずれも有害物質であり、代謝や血液循環に悪影響をもたらします。このため、禁煙を推奨するのが「一無」の考え方です。

ニコチン
糖代謝や脂質代謝に異常を引き起こし、糖尿病や脂質異常症などのリスクを高める
中枢神経系の興奮と抑制に影響し、心臓や血管系への急激な影響をもたらす
タール
さまざまな発がん物質・発がん促進物質、その他の有害物質を含む
一酸化炭素
赤血球のヘモグロビンと強力に結びつくため、血中の酸素運搬機能を妨げる
酸素の運搬量を増やすために赤血球が異常に増加し、多血症という血液がどろどろの状態になる

食べ過ぎ・飲み過ぎを防ぐ「二少」のすすめ

「二少」とは、食事・飲酒をほどほどにすることです。暴飲暴食をやめることはもちろん、生活習慣病の予防や改善の基本は食事療法にあります。

食事は毎回お腹いっぱいに食べるのではなく、毎食7〜8分目を意識しましょう。偏食をせず、よく噛んで三食規則正しく食べることも必要です。栄養バランスの良い主食と一汁三菜の献立を心がけ、白米や白パン・白砂糖、塩分などは摂りすぎに注意しましょう。

また、大量の飲酒も生活習慣病と密接に関わりがあります。厚生労働省の推奨している1日のアルコール摂取許容量は、1日20g程度とされています。主なアルコール飲料に含まれるアルコール量の目安を以下に示しておきますので、お酒を飲む際には20gを大きく超えないよう気をつけましょう

  • ビール(中瓶1本500mL)5%…20g
  • 清酒(1合180mL)15%…22g
  • 焼酎(1合180mL)35%…50g
  • ウイスキー・ブランデー(ダブル60mL)43%…20g
  • ワイン(1杯120mL)12%…12g

健康長寿をプラスにするための「三多」って?

「体を多く動かす」「休養をしっかりとる」「多くの人・物・事に接する」の3つを「三多」と呼んでいます。体をしっかり動かすとともに、十分な休養を摂るというメリハリのある生活を送ることで、健康的に長寿を生きることができます

1日に20分の歩行を2回、体操や筋力トレーニングを各10分程度行うのが理想ですが、なかなか時間が取れないという人は、まずは日常生活での運動量を増やすことから始めましょう。ひと駅手前で降りて歩く、買い物や外出の際にはできるだけ徒歩を増やすといったひと工夫で構いません。

標準的な睡眠時間は、6〜8時間とされています。しかし、快適な睡眠時間は人によって異なりますので、活動量に応じて適切な睡眠時間を取れるようにしましょう。睡眠に限らず、仕事の合間の休憩や、月に6日以上仕事をしない休日を取ることなど、心身ともにリフレッシュする時間を作ることが大切です。

また、多くの人や物・事に接する、創造的な生活を送ることは、生き生きと暮らしていくために重要です。俳句や絵を描くなど、退職後でも楽しめる趣味を持っている人はいつまでも若々しさを保っている人が多いものです。

おわりに:生活習慣病を治療することで、EDとともに若返りを目指そう

生活習慣病に起因するEDの場合、生活習慣病を治療することでEDの治療にもつながる可能性があります。また、生活習慣病を治療することは、EDだけでなく細胞や組織の障害を防ぎ、老化を抑えることができると考えられます。
EDだけでなく若返りにも重要な生活習慣を見直し、老化を防いで若返りの効果を享受しましょう。

監修 : ソラリアクリニックグループ特別顧問、泌尿器科専門医、指導医、医学博士 古賀 祥嗣

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