がんの治療が原因でEDになることもあるって本当?

ED

ED(勃起障害)には、多くの原因が隠されています。ストレスなどの心因性、糖尿病などの生活習慣病などがEDを引き起こすことは有名ですが、がん治療がEDを発症させることは、あまり知られていないかもしれません。ここでは、その理由と治療法などについて解説していきます。

がんの治療でEDになってしまう原因とは!?

前立腺がん、膀胱がん、直腸がんなど、主に骨盤内の腫瘍に対する手術や放射線治療は、EDを引き起こす原因となります。また、がん治療のなかで最もポピュラーな抗がん剤治療や、がんの精神的ケアに用いられる抗うつ薬や抗不安剤も、EDとの関連があるとされています。

勃起が起こるためには、性ホルモンや神経、血管、筋肉など、あらゆる箇所が協調的に動かなければなりません。男性は性的興奮を覚えると、神経からNO(一酸化窒素)が出て動脈血流が増え、結果として勃起が起こります。EDとは、このプロセスの中のどこかに障害がある状態のことをいいます。

がん治療におけるEDの原因には、以下の3つが挙げられます。

  1. がん治療による精神面での影響から、性的な興奮を覚えなくなる心因性の原因。自分の生命の危険や治療自体が精神的ストレスにつながり、性欲が低下する。また、抗がん剤治療に使われる薬剤の中に、性欲と密接に結びついたテストステロンの値を低下させる作用を持つものがあることも原因の一つとされる
  2. 骨盤内の手術などで神経が傷ついたり切除されることにより、勃起に不可欠なNOが出なくなる。神経性EDという
  3. 手術で動脈が傷つき、糖尿病や動脈硬化などの血管障害を引き起こす。血管EDという。放射線治療によるEDも、この血管性EDの一つと考えられる

がんが原因のEDは治療できるの?

それでは、がん患者に生じたEDに対して、いったいどのような治療が行われるのでしょうか。以下、順番に見ていきましょう。

カウンセリング

さまざまな不安やストレスからうつ状態にあるがん患者が多いため、まずは、個々の訴えに寄り添う十分なカウンセリングが必要です。そもそも、EDに対する訴えを言い出せていないケースも存在します。

薬物治療

PDE-5阻害薬は、EDに対してもっとも有効とされる治療法の一つです。日本で処方される治療薬としては、効果が2〜3日持続し、動脈硬化や狭心症予防にも使用されるシアリス®、効果が短時間のため性交渉の1時間前に服用するバイアグラ®とレビトラ®の3種類があります。がん患者においては、特に心因性のEDに対して高い有効性が期待されます。

テストステロン補充療法(TRT)

抗がん剤治療などによって下がったテストステロンの値を上げる治療です。もっとも一般的なのはテストステロン注射ですが、軟膏でも有効性がみとめられています。ちなみに、内服薬は腸管からの吸収が不安定なこと、肝障害の頻度が高いことなどから、ほとんど使用されません。

補助器具、注射など

上記のほかにも、陰茎基部にゴムバンドを巻いて擬似勃起状態を起こす陰圧式勃起補助器具や、陰茎海綿体に直接血管拡張薬を注入する陰茎海綿体注射などの治療法があります。陰茎海綿体注射は、たとえばPDE-5阻害薬が効かなかった場合でも、手術になどに伴う神経性EDに高い効力を発揮することがあり、一つの治療法を試して効果が感じられなくても、かならず別の治療法があるということを、ぜひ覚えておいてください。

抗がん剤治療中の性生活の注意点

抗がん剤などの化学療法では、白血球が減少して抵抗力が低下して細菌やウイルスに感染しやすくなる副作用があります。したがって、この白血球減少期にはあらゆる感染のリスクを避けるため、性生活は控えるようにしましょう。また、血小板減少期には、少しの刺激でも出血したり、力むと脳出血を引き起こす可能性があります。さらに、粘膜障害を起こしやすい抗がん剤を使用している場合は、粘膜に刺激を与えないようにして、局所を清潔に保つこと、粘膜障害を起こしやすい、治療終了後の10日〜2週間は性生活を避けることを心がけてください。

また、女性の場合はホルモンバランスの崩れによって、性交痛を伴う場合もあります。膣内の分泌物が減少している時は、市販されている水溶性膣潤滑剤ゼリーなどを使用するのも良いでしょう。痛みが続くと性生活への意欲がそがれてしまいますから、無理をしないようにしてください。口や肛門を使った行為は避け、かならずコンドームを使用して避妊しましょう。

いずれにせよ、一番大切なのはパートナーとのコミュニケーションです。血液検査の結果を見ながら患者本人とパートナーが副作用の発現時期をしっかり理解して、お互いが満足出来る方法を見つけてください。

おわりに:がん治療中のEDは、パートナーとの支えあいを大切に!

がん治療によるEDであっても、かならずそれぞれの症状にあった治療法が見つかるはずです。また、パートナーと支えあいながら愛情表現を模索して、さらなる信頼関係を築いていってくださいね。

監修 : ソラリアクリニックグループ特別顧問、泌尿器科専門医、指導医、医学博士 古賀 祥嗣

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