EDが動脈硬化の兆候!?予防・改善はできるの?

ED

EDとは、性行為の際に勃起しなかったり、勃起した状態や硬さが維持できなかったりする状態のことですが、EDが動脈硬化の兆候であるというのは本当なのでしょうか?また、動脈硬化が疑われる場合、予防・改善することはできるのでしょうか?

動脈硬化とは、どういう状態?

動脈硬化とは、一言で言うなら「血管が老化した状態」のことです。肌や内臓が年月を経てダメージを受け、シワやシミができたりたるんだり、機能が衰えてくるのと同じように、血管も長い年月の間に細胞が傷ついて弱り、しなやかさなども失われていきます。しかし、肌や内臓と違って見た目や自覚症状に乏しい変化であるため、多くの人が血管の老化には気がつかず、放置してしまうことが多いのです。

動脈硬化を放置してしまうと、血液の通り道が狭くなったり、血栓ができて血管が詰まったりしてしまいます。血栓によって血管が詰まってしまうと、血液が流れなくなり、その先の臓器に酸素や養分が行き渡らなくなります。そして、心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患を引き起こしてしまうのです。

老化という表現から、どうしても高齢者を想像してしまうことが多いのですが、血管の老化は幼少期から既に始まっているのです。30歳ごろには、多くの人の血管で軽い動脈硬化が見られ、40歳ぐらいからは、ほとんどすべての人の血管が動脈硬化の状態であると言われています。できれば30歳ごろから、遅くとも40歳ごろからは、血圧の測定などを自主的に行い、血管の状態に気を配っておくことが疾患の早期発見のために重要です。

コレステロールが動脈硬化に関係しているの?

動脈硬化と一緒によく語られるのが、コレステロールです。このことから、コレステロールと聞くと言葉のイメージとして非常に悪いイメージを持ってしまっている人も多いのですが、血液中に存在しているコレステロールには「善玉」と「悪玉」の2種類があります。このうち、動脈硬化のリスクを高めてしまうコレステロールは「悪玉コレステロール(LDL)」の方なのです。

「善玉コレステロール(HDL)」は、いわば悪玉コレステロールを減らす役割をしてくれる良いコレステロールです。血液中の余分な悪玉コレステロールを肝臓に運び、分解と排泄を助ける働きがあります。これによって、動脈硬化のリスクを減らすことができます。

これまでは、HDL・LDLも含めて全てのコレステロールが多い場合を「高脂血症」と一括りにして、動脈硬化リスクが高まるとされてきました。しかし、現在では総コレステロール値だけではなく、HDL値とLDL値の両方の値を検査し、LDL値が高くHDL値が低い場合を「脂質異常症」として動脈硬化リスクが高まるとしています。

コレステロール以外にも動脈硬化の原因があるの?

コレステロール値が正常値の範囲内であっても、動脈硬化を起こす場合があります。動脈硬化には、コレステロール値以外にも以下のようなリスク因子が関係しているのです。

  • 肥満(特に内臓脂肪型肥満)
  • 高血圧
  • 高血糖
  • 喫煙
  • 動脈硬化になりやすい体質

動脈硬化が進行する人の多くで、これらの要因とコレステロール値が複合的に重なり合っていることがわかっています。つまり、コレステロールは動脈硬化の大きなリスク因子であることは本当ですが、コレステロールだけが動脈硬化の原因というわけではないのです。

EDが動脈硬化の兆候と言われる理由とは?

EDとは、性的な刺激を受けても陰茎の勃起がうまくいかない、または維持できない状態のことです。通常、性的な刺激を受けると脳から陰茎に神経を通じて「勃起しなさい」という指令が出ます。すると、陰茎動脈に血液が流れ込み、血液の圧力によって海綿体が硬くなり、勃起が起こります。しかし、何らかの原因で十分に血液が流れ込まないと、勃起しても硬度が足りない、または維持できない、あるいはそもそも勃起しないという状態になってしまうのです。

EDになりやすい年齡には、2つのピークがあります。第1のピークは30代後半〜40代前半で、いわゆる「心因性ED」が圧倒的に多いのが特徴です。第2のピークは50代〜60代で、「器質性ED」というEDが増加してきます。心因性は文字通り精神的な原因によるEDで、器質性は身体的な原因によるものです。

動脈硬化が関係するEDは、50代〜60代に多い「器質性ED」の方です。長年の細胞へのダメージの蓄積によって動脈硬化を起こした血管は、狭く細くなり血液が流れにくくなります。このとき、もともとの血管の太さが太ければ多少硬くなったり狭くなったりしても血液が流れることができますが、もともとの血管が細い場合はすぐに影響を受けてしまいます。

陰茎の血管は、直径約1〜2mmとされています。心臓の冠動脈の根本で3〜4mm、頸動脈は5〜6mmと言われており、体の中でも特に陰茎の血管は細いのです。そのため、全身の血管にダメージが蓄積していくとき、一番初めに動脈硬化の影響が出やすいのが細い陰茎の血管であると言えるのです。

ですから、EDは動脈硬化の兆候と言うことができます。EDと動脈硬化の関連は既に示唆されていて、心筋梗塞や脳血管疾患などの前駆症状であると言われています。心臓や脳の血管よりも細い陰茎にダメージが現れたことは、動脈硬化を早期発見するマーカーとしても考えられるのです。

動脈硬化を予防・改善するにはどうすればいい?

動脈硬化のリスク因子には、脂質異常症以外にもさまざまなリスク因子があることはご紹介しましたが、それぞれの詳しい意味や、対処法についてもご紹介します。

脂質異常症(脂質代謝異常)
悪玉コレステロール(LDL)の中でも、特に小型のLDLは血管内壁に入って酸化され、動脈硬化の大きな要因になる
中性脂肪が増えると肥満になるほか、小型のLDLを増やす原因になる
肥満
内臓脂肪が多くなると、血液中のLDLや中性脂肪が増え、動脈硬化のきっかけに
内臓脂肪が多いまま放置していると、高血圧や高血糖を引き起こし、動脈硬化を急速に進行させてしまう
高血圧
血圧によって血管内壁を傷つけることで、小型LDLが入り込みやすい状態になってしまう
血管への負担が大きくなり、動脈硬化を進行させてしまう。心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことも
高血糖(糖尿病)
高血糖の状態が続くと、インスリンの働きが低下して血中の脂質が増える
特に、食後高血糖は血管内壁にものが付着しやすくなり、動脈硬化を引き起こしやすくなる
喫煙
活性酸素を増やし、血管内壁に侵入した小型LDLの酸化を促す
血管を収縮させ、高血圧の原因となる
動脈硬化になりやすい体質
近親者に心筋梗塞や脳卒中を起こした人が多い場合、体質的に動脈硬化になりやすい場合がある

高血圧によって血管内壁へのダメージが増えると、血管内壁に小型LDLが入り込みやすくなります。脂質異常症や肥満・高血糖によって余分に増え、血管内壁に入り込んだ小型LDLは、喫煙によって酸化され、さらに周囲の細胞にダメージを与えます。また、脂質異常症・高血糖・喫煙などによって血管の付着物が増えたり、血管が収縮して狭くなったりすると、血液が流れにくくなり、高血圧の原因となります。こうして、一連の悪循環が起こってしまうのです。

近親者に心筋梗塞や脳卒中を起こした人が多い場合、動脈硬化になりやすい体質である可能性が高いです。家族や親戚に心筋梗塞や脳卒中を発症した人が多い場合は、若いうちから動脈硬化の早期発見のため、定期的な検査を行っておくと良いでしょう。

その他、できる対処法は以下のようになっています。

肥満の解消
食生活に気を配り、脂っこいものや糖分の多いものは控えめにする
1日30分程度の適度な運動を取り入れる
動物性脂肪を減らし、野菜を増やす
肉などの動物性脂肪は血中の脂質を増やして肥満や脂質異常症を引き起こしやすいため、控える
塩分を排除して血圧を下げる、脂質の酸化を防いで動脈硬化を予防するなどしてくれる野菜を多く食べるようにする
適度に運動をする
1日30分程度、軽めの有酸素運動(散歩、ウォーキング、水中歩行など)を行う
既に動脈硬化を指摘された場合は自己判断で運動するのは危険なため、医師の指導を受ける
禁煙
タバコは活性酸素を増やし、血管内壁に侵入した小型LDLの酸化を促進してしまう
医師の指導も含め、禁煙を心がけることが大切

肥満は高血圧・高血糖・脂質異常症の全てのリスクを高めてしまうため、まずは肥満を解消することが大切です。肥満を解消するためのポイントは、「食生活の改善」と「適度な運動」です。食生活では油っぽい揚げ物や脂身の多い動物の肉などを避け、脂質の酸化を防いだり塩分を排出したりしてくれる野菜を多く摂取するようにしましょう。

また、タバコを吸うと活性酸素が増え、細胞や小型LDLの酸化を促進してしまいます。すると、血管内皮細胞だけでなく、全身の細胞が酸化によって老化が進んでしまいます。ですから、タバコを吸っていてEDが気になる人は、ぜひ禁煙を心がけましょう

おわりに:動脈硬化で血管が狭くなるとEDになることも!生活習慣の見直しで改善しよう

動脈硬化によって、血液が流れにくくなると、全身の血管の中でもかなり細い陰茎の血管は真っ先にダメージを受けます。このため、EDは動脈硬化の兆候であると言うこともできるのです。

しかし、EDの全てが動脈硬化によるものというわけではありません。心因性のものは、まずストレス要因を取り除きましょう。動脈硬化かも?と思ったら、食生活や運動・喫煙などの生活習慣を見直して改善しましょう!

監修 : ソラリアクリニックグループ特別顧問、泌尿器科専門医、指導医、医学博士 古賀 祥嗣

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