血管年齢を若返らせることはできる?

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「血管年齢」という言葉を聞いたことはありますか?人間が年を取って老化するのは自然の摂理ですが、それと同様に血管も老化することがわかっています。では、血管の老化とはどのような状態なのでしょうか?また、血管年齢を若返らせることはできるのでしょうか?

血管が年をとるってどういうこと?

肌や髪の老化は、見た目にもわかりやすい変化で実感しやすいですが、「血管が老化する」という状態は通常目に見えるものではなく、なかなか実感しづらいものです。血管が老化するとは、どういった状態なのでしょうか?

そもそも、肌や髪の老化も、肌細胞や毛細胞にダメージが蓄積することで起こります。ダメージの原因は様々ですが、紫外線や気温・乾燥などの外的刺激、酸化などの内的刺激などが主な原因として考えられます。血管も肌や髪と同様、ダメージが蓄積していくことで老化します。血管は皮膚の内側にあるものですから、皮膚細胞を通過してくる紫外線以外の外的刺激は受けづらいですが、活性酸素などによる内側からのダメージは大きく受けます

血管の働きは、血液をスムーズに全身に巡らせ、それぞれの細胞に酸素と栄養をゆきわたらせることです。若い血管はしなやかで血液も流れやすいですが、老化すると弾力を失い、硬くなって血液も流れにくくなります。血流が悪くなると、肌や髪のトラブル、肩こりや腰痛、冷えなどの不調にもつながります。さらに動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳梗塞などの生命に関わる「血管病」のリスクが高まります。

血管は、外膜・中膜・内膜の三層からなる細胞の構造をしています。

  • 外膜…血管を保護する
  • 中膜…血管にかかる圧力を調整する
  • 内膜…血液に直接触れる部分で、繊維からなる薄い層と内皮細胞でできている

動脈硬化とともによく語られるのが血管内皮細胞ですが、この内皮細胞は動脈硬化のもとになる物質を血管壁に侵入しにくくしたり、血液をサラサラに保ったりする重要な役割を担っています。内皮細胞は年月を経てダメージを受けると、当然その働きも低下します。しかし、近年、食生活を始めとして生活習慣を改善することで、内皮細胞の機能が回復し、血管年齢を若返らせられることがわかってきました。

体の老化は、血管の老化から始まるとも言われます。血圧が正常値であっても、動脈硬化や酸化ストレスなどによって血管が詰まってしまうと体の細胞に酸素と栄養素が行き渡らず、干からびたような状態になってしまいます。たとえば、男性機能の不具合(EDなど)、皮膚であれば乾燥肌やシワ、肩は肩こり、毛髪は抜け毛などが起こります。心臓や脳などの血管が詰まると、生命を脅かす疾患に繋がります。体を若々しく保つだけでなく、いつまでも健康でいるために、血管を若返らせることはとても重要なことなのです。

血管を若返らせる方法とは!?

では、具体的に血管を若返らせるにはどのようなことをしたら良いのでしょうか?血管の老化の原因は、前章でも見てきたとおり、「活性酸素による動脈硬化」と「運動不足」の2つがあります。これらを改善することで、血管の老化を予防し、若返りを図ることができます。

  • 食生活を見直す
  • ビタミンCやE、βカロテンなどの抗酸化物質を摂取する
  • 適度な運動を行う

これら3つの項目について、詳しく見ていきましょう。

食生活を見直す

まずは、普段の食生活では「塩分を減らす・余分な塩分を排出する」「青魚を摂る」ことを意識しましょう。塩分は、そのものが血管を傷めるだけでなく、塩分の摂りすぎで血圧が上がることで血管内皮細胞を傷つけ、その機能を低下させてしまいます。ですから、摂取する塩分を控えめにするだけでなく、体内で余った塩分を排出するカリウムを多く含んだ食品を食べると良いでしょう。

  • 塩分の多い食品…塩・しょうゆ・みそなどの調味料、たらこや塩辛・漬物など
  • 塩分を排出する食品…大豆・野菜・海藻・モロヘイヤなど

大豆や野菜は余分な塩分の排出を助けてくれるカリウムだけでなく、後述する抗酸化作用のある大豆イソフラボンやビタミンC・Eも含んでいます。

また、魚に含まれる良質なタンパク質は内皮細胞の新陳代謝を促し、血管を強くしてくれます。さらに、イワシやアジなどの青魚は、タンパク質だけでなくDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を含んでいます。これらの脂肪酸は、赤血球を柔らかくし血液の粘度を下げることで動脈硬化を予防し、血液を流れやすくする働きがあります。

ビタミンCやE、βカロテン、大豆製品などの抗酸化物質を摂取する

ビタミンC・Eは、化粧品にも含まれるほど抗酸化作用のある物質として有名です。これらのビタミンは活性酸素の働きを抑え、血管が老化するのを抑制する働きがあります。また、同じような働きをする物質にβカロテン、大豆イソフラボン、大豆サポニンなどの成分があります。食品から摂取するのが最も体に良い方法ですが、不足分をサプリメントなどで補うのも有効です。

おすすめの食品は、トマト・カボチャです。トマトにはビタミンC・Eが豊富で、赤い色素やリコピンにも抗酸化作用があります。カボチャにはβカロテンが豊富に含まれ、その他のビタミン類やカリウムも多く含まれています。さらに、これらの成分は炒めたりサラダに入れたりして油と一緒に摂取することで、吸収率がアップすることがわかっています。

また、納豆や豆腐などの大豆製品には、大豆イソフラボンや大豆サポニンが含まれています。これらの成分には抗酸化作用があり、ビタミンC・Eなどと同様に血管の老化を防ぎ、血液をサラサラにしてくれます。さらに、納豆に含まれるナットウキナーゼという成分は、血栓の主成分であるフィブリンという成分に働きかけ、血栓を溶かす作用があります

適度な運動を行う

血管年齢を若返らせるためには、適度な運動も必要です。特別なトレーニングをする必要があるわけではなく、毎日10分程度しっかり歩くだけで内皮細胞が活性化し、血管が広がって血液が流れやすくなります。車やエスカレーターの使用頻度を少し減らし、積極的に歩いたり階段の上り下りを行ったりするだけでも構いません。

また、血管は縦に伸ばすと柔らかくなるという性質があります。そこで、仕事中や家事の合間に体を伸ばすストレッチを行うことでも血管を柔らかくし、同時に硬くなった筋肉をほぐすこともできます。ストレッチで血管が柔らかくなり、血流が良くなると、血管の壁から「プロスタサイクリン」という成分が放出され、血液がサラサラになります。

血管ストレッチは、以下のような方法で行います。

  1. 両足を肩幅に開く
  2. 顔は正面を向き、踵は床につけたままにする
  3. 両手の指をしっかり「パー」の形に開き、万歳をするように上に上げる
  4. 呼吸は止めないよう、ゆっくりと行う
  5. 力を抜き、リラックスする

これを約20秒で3回繰り返し、合計1分程度行いましょう。慣れてきて余裕がある人は、さらに以下のようなストレッチを行うとより効果的です。

  • 万歳の形に両手を上げた後、両手を組む
  • そのままゆっくり体を横に倒してストレッチする

この動きは1回約15秒で、左右2回ずつ、やはり合計1分程度行います。筋肉をしっかり伸ばすように、決して速く動かさないようにゆっくりと行います。

こんな習慣、病気には注意しよう!

血管が老化しやすくなる習慣には、以下のようなものがあります。

  • 早食いである
  • 肉や揚げ物が好き
  • 野菜・魚をあまり食べない
  • 丼ものやカレー・パスタ・ラーメンなどの単品料理が多い
  • 外食が多い
  • インスタント食品やスナック菓子が好き
  • 毎日お酒を飲む
  • 日常生活であまり動かない
  • 運動をする習慣がない
  • いつも忙しく、睡眠不足である
  • イライラすることやストレスが多い
  • 喫煙している

前章でも触れたとおり、食生活や運動の習慣を見直すことは血管年齢を若返らせるために重要です。その他にも、単品料理や外食、インスタント食品やスナック菓子によって栄養が偏ることや、睡眠不足・ストレスなどによって細胞にダメージがかかることは血管を老化させてしまうため、避けるようにしましょう。良質な睡眠やストレス解消法を見つけることも大切です。

さらに、喫煙は活性酸素を増やし、血管内皮細胞そのものに酸化ダメージを与えるだけでなく、血管内皮細胞を傷つける脂質の酸化を促進してしまいます。ですから、喫煙の習慣だけでなく他の血管が老化しやすくなる習慣も持っている場合、できるだけ禁煙を心がけるようにしましょう。

おわりに:血管年齢は若返らせることができる!血管を老けさせない習慣を身につけよう

血管年齢は、食生活や運動習慣、禁煙などで若返らせることができます。塩分を控え、抗酸化作用のあるビタミンC・Eや大豆イソフラボンなどを積極的に摂取しましょう。また、毎日10〜30分程度のウォーキングなどで運動の習慣を作り、血流を良くしましょう。

血管を老けさせないためには、毎日の生活習慣が大切です。いつまでも若々しく健康でいるために、血管を老化させず、若返らせるような習慣を作っていきましょう!

監修 : ソラリアクリニックグループ特別顧問、泌尿器科専門医、指導医、医学博士 古賀 祥嗣

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