精力や性欲に衰えがでるのはなぜ?精力剤って効くの?
なんだか、昔に比べて性欲が湧かないな、やる気や精力が落ちてきたな、と感じることはありませんか?こうした問題は、昔は「気の持ちよう」など、メンタルの問題として片付けられてきました。
しかし、最近の研究ではそうとも言い切れないことがわかってきています。精力や性欲が衰えてくるのはなぜなのでしょうか?また、精力剤は本当に効くのでしょうか?
性欲や精力が衰える原因とは?
性欲や精力が衰える原因は、昔からメンタルの問題であると考えられてきました。しかし、血管系や内分泌系の研究が進むにつれ、血流やホルモンの分泌量の低下などが大きく関わっている場合や、薬剤が原因となる場合もあることがわかってきました。
- メンタルが原因である場合
- 日常的に強いストレスを感じていると、男性ホルモン濃度は低下します。
- 疲労や抑うつ、不安、人間関係、小児期の性体験による抑圧などが原因となります。
- 血流の低下が原因である場合
- 動脈硬化や高血糖などで血流が低下すると、勃起不全や男性ホルモンが運ばれにくくなるなどの症状が現れます。
- 血流の低下は体の組織の栄養不足や酸素不足も同時に引き起こします。
- 加齢が原因である場合
- 男性ホルモンの分泌量は加齢とともに低下し、男性の更年期である「LOH症候群」と呼ばれる症状を引き起こします。
- 40歳以上の男性では、誰でも起こる可能性があります。
- 薬剤の使用が原因である場合
- うつ病・不安症・前立腺がんの治療などに使われる薬剤が、男性ホルモンであるテストステロンの血中濃度を下げることがあります。
- テストステロンは性欲に関わるホルモンですから、テストステロンが減少すると性欲も減退してしまいます。
これらの原因によって性欲や精力が減退すると、「やる気が出ない」「慢性的に体がだるい」「性行為が面倒」など、気力そのものが湧かないような状態に陥ってしまいます。そこで、生き生きとした生活を送り、QOL(生活・生命の質)を上げるために、心理カウンセリングやテストステロン補充療法を行ったり、使用する薬剤を変えたりする工夫が必要となってきます。
精力剤の種類と成分の働きとは?
性欲や精力の衰えを補うために、精力剤を使うこともあります。精力剤には医薬品成分として認められているものと、サプリメントなどの形で有効成分を食品として摂取するものがあります。
- 医薬品としての精力剤
- メチルテストステロンという成分が男性更年期改善薬として認められている
- メチルテストステロンを使った医薬品は、薬剤師がいないと購入できない第1類医薬品に分類されている
- その他、第2類・第3類医薬品としてビタミン剤やにんにくからの抽出成分なども
- サプリメントなど、一般食品としての精力剤
- あくまでも健康食品のため、医薬品に分類される成分は含まれない
- 亜鉛のサプリメントは医薬品ではないが、精子形成や性欲に大きく関わるため摂取すると良い
- その他、ビタミン類や鉄、アルギニン、シトルリンなどが有効成分とされる
医薬品または医薬部外品・特定保健用食品とは、その一定の効果・効能に厚生労働省の認可を受けているものです。逆に、一般の食品として販売されているサプリメントの中には、効果や効能に個人差があったり、研究などでその効能が証明されていないものもありますので、摂取には注意が必要です。
医薬品としての精力剤にはどんなものがあるの?
医薬品成分として用いられるものには、主に「メチルテストステロン」「タウリン」の2種類があります。メチルテストステロンを含む精力剤は第1類医薬品として分類されるため、薬剤師の説明を受けないと購入できません。しかし、タウリンは第1類〜第3類とさまざまな医薬品に含まれていて、例えば栄養ドリンクなどは薬剤師がいなくても購入できます。
メチルテストステロンは、肝臓での代謝を受けにくいため内服薬として摂取しても、体内でテストステロンと同様に男性ホルモン作用を示すとされています。そこで、テストステロン値が低下した男性更年期(LOH症候群)を発症している人に対して症状の改善効果が認められているのです。あくまでもテストステロン値が低下している人に対して改善効果があるものですから、テストステロン値が低下していない人は摂取しても効果はありません。
それだけでなく、テストステロン値が突然増加すると急激に動脈硬化を起こしたり、前立腺肥大などの症状が悪化する副作用のリスクもあります。摂取方法や量などは、購入時の薬剤師の説明をしっかり聞き、説明書にもある用法・容量などを正しく守りましょう。できれば、医療機関で血中のテストステロン値を測定した上で、医師の指導を受けながら摂取することが望ましいです。
タウリンは、アミノ酸の一種で「ホメオスタシス作用」という外界の環境に左右されることなく体温や血圧を一定に保つ働きをしていて、滋養強壮や肉体疲労などに効果があります。また、心臓のうち左心室の働きを高め、心不全を改善する効果があるとする研究があり、うっ血性心不全の治療薬としても使われています。
また、胆汁酸を排出するのを助けるため、肝機能を高める作用もあるとされています。ただし、EDを改善したり性欲を増強したりという効果に関しては、はっきりと効能が認められたという研究はありません。
健康食品としての精力剤にはどんなものがあるの?
健康食品の精力剤として挙げられるのは、「亜鉛」「マカ」「シトルリン」「トンカット・アリ」などです。特に、亜鉛は鉄に次いで体内で2番目に多い微量元素と言われており、味覚や免疫機能、皮膚や粘膜作用の他、男性では精子形成などの男性機能に大きく関わっているため、男性機能を回復・増強するためにも積極的に摂取したい栄養素です。
日本人の成人男性の場合、1日に10mgの亜鉛を摂取することが推奨されていますが、1日の男性の平均摂取量は平均して8.8mg程度であることがわかっており、摂取量が不足していると言えます。そこで、牛肉や豚肉の赤身、牡蠣や煮干しなどを積極的に摂取したり、サプリメントや健康食品などで補助的に摂取することが推奨されます。
亜鉛をサプリメントから摂取する場合、手軽に多くの量が摂取できてしまうため耐容上限量に注意する必要があります。成人男性で1日40〜45mgが耐容上限量とされていて、食品から摂取する場合はこの量を超えることはそうありませんが、サプリメントから摂取する場合は気をつけましょう。
精力剤として近年認知度が高まってきているのが「マカ」という生薬です。アブラナ科の多年草植物で、アミノ酸やミネラルを始め、リノレン酸・パルミチン酸・オレイン酸などの必須脂肪酸・飽和脂肪酸と呼ばれる体内で必要な脂質を含んだ栄養価の高い植物です。ただし、原料となる植物自体を育てる土壌が枯れていたり農薬が残留している食品もありますので、サプリメントなどで摂取する場合は販売元に信頼のおける製品を選ぶことが重要です。
マカの効果・効能としては、健康な男性がマカを12週間摂取したところ、性欲が改善されたことを示す臨床試験の報告があります。その他には疲労回復・ED改善・精子の運動能増加・生理不順・不妊症などに効果があるとされていますが、これらについては有意に効果があったとする研究はまだまだ少なく、科学的に効能は証明されていません。
シトルリンは、スイカから抽出され抗疲労成分としてヨーロッパなどで販売されている成分で、「手や足など末端組織での血流増加」「疲労回復効果」などがあると研究で示されています。また、バイアグラなどのED治療薬と同様に血管拡張作用があると考えられていますが、これまでの研究でED症状が改善されたという報告はまだありません。
トンカット・アリはニガキ科の低木で、男性の性機能改善や女性の不妊改善などが効能としてうたわれています。しかし、ヒトでの効能についての有効なデータがなく、また安全性についても十分に確立されているとは言い難い成分です。特に、胎児や乳児への影響はわかっていませんので、妊娠中や授乳中の人は使用を避けましょう。
EDに精力剤は効く?
上記の食品などの効能からもわかるように、精力剤はあくまでも「性欲の改善」「気力の回復」といった効果・効能に特化していて、EDに関する効能はそれほど高くありません。中には、ED改善に関しては全くデータのないものもあります。ですから、EDの改善と精力の増強は全く別物として考えるのが良いでしょう。
性欲や精力ではなく、EDを治療したい場合はED治療薬を処方してもらいましょう。亜鉛を始め、サプリメントなどで勃起改善をうたっているものも少なくありませんが、EDの原因は一つとは限らないため、医師の診察を受けて適切な治療を行うことがED改善への最短距離なのです。また、逆にED改善薬に精力を高める効果もありませんので、その点でも注意が必要です。
おわりに:精力や性欲の衰えは体の問題でもある!
精力や性欲の衰えは、単なる気の持ちようではなく、薬剤の使用や加齢などによる体の問題から来ることもあることがわかってきています。そこで、心理カウンセリングや生活習慣の改善指導、ホルモン補充療法などを受けることも有効です。
また、手っ取り早く精力剤を服用する方法もあります。できれば薬剤師や医師に相談して、効果や安全性の信頼できる精力剤を使用するのが良いでしょう。