どこからが早漏?どこまでが遅漏?性生活の悩みをマジメに考えてみよう
一定時間よりも早く射精してしまうことを「早漏(そうろう)」、逆に射精に時間がかかり過ぎることは「遅漏(ちろう)」と呼ばれます。
これらは性生活にかかわる言葉として広く知られていますが、その正しい定義を知っている人は、男女ともに少ないのではないでしょうか。
今回は早漏・遅漏について、医学的な角度からマジメに解説していきます。
早漏とは!?医学的な定義ってあるの?
米国泌尿器科学会(AUA)が2008年5月に発表した内容によると、性交時に毎回またはほぼ毎回、以下のような状態になることが医学的な早漏として位置付けられています。
早漏の医学的な定義
- 射精が起こるのが膣内挿入前、または腟内に挿入してから1分以内である
- 腟内挿入すると射精を遅らせたりコントロールすることが全く、またはほぼ不可能
- 射精のコントロールができないことが原因で、性交にトラウマやストレスを感じている
- 射精のタイミングが原因で性交自体に精神的苦痛を感じ、性交を避けるようになった
従来、医学的な早漏の診断基準には諸説あり、どの基準を用いるかは個々の医師の判断にゆだねられていました。しかし近年では、上記の診断基準で統一されつつあります。
なお、早漏が起こる原因については体質による先天的なものから、後天的な心因性のもの、パートナーとの関係性によるもの、EDの併発までさまざまなケースが報告されています。
では、遅漏の定義と原因は?
医学的な遅漏の定義については、国際性機能学会で議論が行われているところですが、一般的には以下にあてはまる場合に遅漏と診断されています。
- マスターベーションでは射精できるのに、腟内挿入では射精ができない
- 腟内挿入にあたり、特に性的快楽も射精も発生しない
- 腟内挿入にあたり、性的快楽は感じられるが射精はできない
- 腟内でも射精はできるが、射精までに非常に時間がかかってしまう
- 性交時、膣内射精によって精神的あるいは肉体的苦痛が生じている
遅漏が起こる原因も、早漏と同様にさまざまです。
代表的な例としては、先天的な身体の機能異常や生活習慣病など疾病の影響、薬の副作用、妊娠そのものや性行の文化的背景に対する、本人の心理的葛藤などが挙げられます。
早漏・遅漏は治療できる?
早漏・遅漏は、いずれもその人の原因にあわせた方法で適切にアプローチすれば、治療していくことも可能と考えられています。
以下に早漏・遅漏それぞれの代表的な治療法をご紹介しますので、確認してくださいね。
早漏の治療方法
代表的なのは、刺激に耐えて射精をコントロールする感覚を身に着けるための「ストップ・スタート法」と呼ばれる治療法です。
ストップ・スタート法の具体的なやり方は、以下の通りです。
- 自分またはパートナーが性的刺激を与えて、射精しそうになる感覚を待つ
- 射精しそうになったら刺激を止め、性的な興奮が治まるのを待つ
- 1~2の行為を3回繰り返し、射精寸前の感覚を把握できるようにする
- 4回目の刺激で射精をする
この方法を繰り返し行い、自分の射精感覚をはっきり認識できるようになると、性交時にもある程度射精をコントロールできるようになります。
なお、刺激は手・口・乳液やローションを使った手・膣という風に、段階的に実際の性交に近い感覚に近づけていくようにするのが、治療成功のポイントです。
遅漏の治療方法
遅漏の治療法は、想定される原因によって大きく変わってきます。
以下からは、遅漏の代表的な原因である「マスターベーション」「心理的要因」「性的対象物の不在」の3つの項目に分けて、適切な治療方法をご紹介していきます。
マスターベーションに原因がある場合
手を使わない方法、または強すぎるグリップや刺激でのマスターベーションが習慣化していると、膣の刺激で射精できなくなるケースがあります。
この場合は、実際の性交に近い刺激になるようマスターベーションの方法を変えたり、パートナーに協力してもらって射精に必要な刺激を得られる姿勢・角度を探すのが効果的です。
心理的な原因がある場合
子供が欲しくない、性交自体に嫌悪感がある、何らかの理由でパートナーとの性交に集中できないなど、心理的な要因から遅漏になるケースは多いです。
まず、子孫をのこすことへの拒否感や性への嫌悪感がある場合は、その想いをパートナーに打ち明けてよく話し合ったうえで、カウンセリングなどを利用しましょう。
また、マスターベーションでは射精できるのにパートナーとの性交で射精できない場合は、マスターベーションへの依存性から遅漏になっているのかもしれません。
この場合は、パートナーに症状を打ち明けたうえで、段階的にマスターベーションと性交を近づけていくのが効果的です。
まずはパートナーの隣の部屋で、次にパートナーと同室で、そして一緒にマスターベーションを行ってから、最後に2人での性交にチャレンジすると良いでしょう。
性的対象物の不在が原因である場合
個人の性癖により、一定の対象物や条件下でないと性的興奮を得られず射精できないために、遅漏となるケースです。
性癖を変えることは極めて難しいため、パートナーの協力を得て性的興奮・射精を得られる対象物や条件を性交時に揃えるのが、最も有効な治療法でしょう。
おわりに: 早漏・遅漏は性機能障害の一種で、治療が可能!
早漏と遅漏は、いずれも腟内での射精に問題が生じる性機能障害です。国内外を問わず、射精の問題に悩む男性・カップルは多いとされていますが、デリケートな問題ゆえパートナーにも周囲にも相談できず苦しむ人も大変多い症状です。しかし、ほとんどの早漏・遅漏は治療可能と言われています。1人で悩み続けるのではなく、自分の症状・原因にあわせた治療が受けられるように、まずは病院で検査を受けましょう。